小説001

小説001

今日からたまに小説を載せて行きます。
今回はその初回です。

空が晴れている。とてつもなく良い天気。梅雨の間の晴れ間で僕が知っている知識では、晴れの日は曇りや雨の日よりも気分がいいはずだ。
こう晴天なのに自分の気分が晴れないという事は、僕は鬱なのかと真剣に考えてしまう。

「ちくちくちくちく」どこかで音が鳴っている。自分の頭の中か、オートバイ通勤で被っているヘルメットの風の抵抗からくる雑音か?

でもはこんな音なんてどうでもよいと思っている。
僕には他に気にしなければいけない事が何10個もあって、そのどれの事も真剣に考えられていない自分に嫌悪感をいだいている。

「ちくちくちくちく」また鳴っている。
また鳴っているのか、ずっと鳴り続けていたのかはっきり覚えてない。
ついさっきの事なのに、たしかな記憶がないのだ。
そしてそれを真剣に考える事もしない。

僕はゾンビ映画が好きだ。
人が意志を持たないで人にかぶりつく。
とても怖い。怖いもの見たさ。
スプラッタムービーの「ジェイソン」も怖いけど、こっちはあまり怖いもの見たさ欲求はない。どちらかというと観たくない。
でもゾンビは怖くて観たくなってしまう。

だんだん会社が近づいてくる。
毎日のようにオートバイで通勤しているんだからそりゃいつかは到着するのだ。
出来ればこのままずっと走り続けていたい。
他にどこにも行きたいと思うところがあるわけじゃないけど、とにかく会社じゃないどこかに走って行きたい。
オートバイで日本一周をしたら気分がいいだろうなぁと思う。

でも日本を出て、海外を走りたいとは思わない。
そんな勇気もなく欲求もない。
海外をオートバイで旅する勇気を持った人にあこがれはするけれど、行きたいとは今の僕は思わない。

僕はオートバイを公園の前に止めた。
ヘルメットを脱いでベンチに座る。
最近紙たばこから電子たばこに変えた。
一服する。
会社に遅刻する時間にはまだまだある。
いつもこのまだまだを感じたくて、僕は遙かに余裕がある時間に家を出るのだ。

空はとても晴れていて、気温も高くない。寒くもない。
これだけ気持ちよい気候は年に何回もない。

「ちくちくちくちくちく」
オートバイから降りたのにまたか?まだ音が聞こえた、聞こえている、、

「ぐぅえええああああ~あああ~ううっつ」
あれ違う音、声?がきこえるぞ。
まあこれも僕が真剣に考えなくてはならない何10個もの内には入っていない音なので無視する。

「ぐふぅうえ~ぎょろろろ~りりぃいいいい~がぁあああああ~」

ひつこい。

考えなくてはならない何10個には入っていないけどさすがにうるさく思う。
「会社までまだまだ」というひとときを邪魔されてしまっている。

なんだよ面度くさいなぁ。僕は振りむいてみる。
特に何もない。
何もないというより普通に道路と僕が止めたオートバイと道路を走っていく自動車達は見えるけど、ひとときを邪魔している音、声?の原因だろうと思える何かは何もない。

ほっとして、ため息をついて僕は振り向くのをやめた。前に向き直る。

「ぎょっ」←僕の思わず出てしまった声。

大きな、とても大きな2つの目?
大きな口、とても大きな、分厚い唇の大きな口?
顔?僕の顔との距離が近すぎて、最初は顔だとはわからなかったけど、顔が目が僕の顔を見上げるように覗いている、ように見えた。

「ごうぐるるぎゃじゃわああ~ああぁあああぁあんん」

なんだなんだ、大きな口の中の奥の腹の中から響いてくるのかこの音、声?は??

僕は身じろぎ一つしない、いや出来ない。

そしてさっきつい「ぎょっ」と言ってしまった事に凄く後悔している。
だいたいこういう怪物っぽいのは何かを探知して襲ってくる←今まで読んできたマンガや映画より

①音に反応して襲ってくる
②動きに反応して襲ってくる
③体温を関知して反応して襲ってくる
④呼吸を探知して襲ってくる
⑤その他、、今は思いだせない

よくあるパターン?か①の音はまずかったと一瞬思う。
どうか①でないようにと僕は祈る。
、、、、静寂(世の雑音はあるが)、、、僕が声を出してからもう数秒経ってる。
世の雑音に僕の声なんて気がつかなかったかしら??
それと怪物の口の奥から聞こえている「ぎゃわわわぁん、、」みたいな声にかき消されてしまっているのか?
①は×
頭の中のチェックリストに×を書く

でもこの怪物っぽいのは相変わらず動かずに僕の顔をじぃ~と眺めている。(ような気がする)

こいつはどれくらいの速度で動けるのか?
例えば野生動物並だと想像してみる。
僕のなまりきった身体で動ける速度では全く何かしらの攻撃(今一番頭にあるのはこの大きな口でかぶりついてくる事)をかわす事は出来ないんじゃないか。多分。
かわせる可能性20%くらい、多分、、、。

もしかわせたとして、怪物っぽい頭っぽい越しには割と大きな木が生えている。
もしそこまで行けたら、僕は木を怪物と僕の間挟んで、右から来たら左、左から来たら右っていう風にしばらくやりとりする事が出来るだろうか?

でまずこの顔が目の前にある状況を脱しなければならない。
口っぽい穴の直径50cm弱くらい、縦に50cm以上の長い物でガード出来れば、一瞬空きをつけるぞ。

小説002につづく